中井出世不動尊の円空仏

2013.03.31.Sun
2013年3月31日

いっせいに芽吹くや時間奔流す     コウコ

「飛騨の円空」展のあと、東京に円空仏が数体あることを知りました。
個人所蔵を除けば、新宿区の中井出世不動尊に祀られている1体のみ
が御開帳(不動明王の縁日 毎月28日)に拝観出来る唯一の像です。

中井出世不動尊 (中落合4-18-16)
中落合の住宅街のお堂に、円空の不動三尊像が安置されていました。
地元の方々が管理を務められ、訪れた人たちにお茶とお菓子のお接待
をされていました。リュック姿の自分が、ふと巡礼者になったような
心持ちです。そう言えば「お遍路」は春の季語でした。


「飛騨の円空」展を兼ねたツアーや、興味を深められた方、
いつも素通りだったと言う街の若い方などが大勢集まりました。
有難いことに昨年から写真撮影が出来ることになりました。

不動明王立像(総高128)
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不動三尊像は、円空仏本来の素地ではなく彩色されていました。
不動明王の右の脇腹は彫って透かしてあります。
光背と持ち物、台座は後世のものでした。
千光寺などの円熟期の不動明王と比べ、左肩に垂らした弁髪の先は
巻き毛で、裳はあっさりしています。
印象としては、初期の作像かもしれません。
円空の不動明王は作風もいろいろで、発見があって楽しいです。

制咜迦童子(総高67)   矜羯羅童子(総高64)
(せいたかどうじ)      (こんがらどうじ)
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不動明王の右に随う制咜迦童子は棍棒を立てて両手で押さえ、
怒りの眼がまんまるに彩色されて印象的です。
左の矜羯羅童子は合掌して謹み深く細い眼をしています。
「素人が色を塗っちゃたんだね~」と残念な声も聞こえました。

千光寺所蔵の、素地の芸術性をあらためて認識しました。
しかし、円空は衆生のために利他に徹して作像したので、彩色に
ついてはむしろ微笑んでいらっしゃると思います。

不動明王は大日如来の化身で、猛火の中に身を置きながら悪鬼や
罪を打ち破るゆるぎない堅固さ、「動かざる者」を意味します。
顔に皺を刻み、右眼は見開き左眼をすがめて天と地を睨みつけ、
閉じた口からは牙を右上と左下に出しています。
本来は憤怒の形相ですが、ここでは3体とも親しみを覚えました。

不動三尊像は台座裏の銘文から、円空生誕の地に近い尾張一宮の
真清田神社の東神寺にあり、江戸時代後期に中井御霊神社の
別当不動院に移されたとあります。
明治の神仏分離で廃寺となってからは、中落合の人々に守られて
大正3年(1914)に不動堂を建立して安置されたそうです。
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撮影 浅香新之助氏(中落合)

道順を教えて頂き、次に中井御霊神社に向かいました。
界隈は桜をはじめ、春の色彩に溢れていました。

中井御霊神社 (なかいごりょうじんじゃ 中井2-29-16)
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創建は不明です。御霊神社は広辞苑によると、「全国に多く、
いずれも遺恨の死を遂げた人々の御霊を祀る」とあります。
中井御霊神社に何故、円空の不動三尊像が移されたのか。
衆生の救済のために安置されたことは確かですが、
経緯は今だ明らかではありません。
境内には「御祈祷の受付」が貼られていました。
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不動尊の方の話では、中井御霊神社は安産の神様で有名だそうです。
安産の御札を頂くために、地元では必ずお参りするそうです。

鳥居を潜ったところに大振りの紅椿と、落椿が鮮やかでした。
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一隅には、昔を偲ばせる竹藪に1羽のキジバトが来ていました。
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境内の中央に文化財の大木のカヤが聳え、何百年という樹齢は
神社の長い歴史を感じさせます。
敷石の陰にノスミレが咲き、遠目にふとキチョウが現れては消え、
誰もいない境内でしばし悠久の刻に浸っていました。

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清澄庭園 (3月中旬)

2013.03.20.Wed
2013年3月20日

初つばめ心に風の吹く日なり     コウコ

初蝶
清澄庭園の門を入り駐輪すると、キチョウが目に飛び込んで来ました。
今春の初蝶ですが、1週間前から飛んでいるそうです。
ツツジの葉に止まると一瞬見分けられません。

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清澄庭園の探鳥会(日本野鳥の会)は毎月第3土曜日にあり、今年で
33年になるそうです。私にとっては久々の参加でした。

初ツバメ
16日は東京で開花宣言が出されましたが、清澄庭園のソメイヨシノ
は1日遅れでした。
初ツバメはどこよりも早く、16日に確認しました。

棗形手水鉢 (なつめがたちょうずばち)

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縮景
名勝地を縮めて表現した縮景のメインは、この庭で最も高い
築山です。富士山の頂上の木々は、背景のビルを隠しました。
中腹にはツツジの植え込みを配し、棚引く雲を表現しています。
枯滝は富士の雪解け水が流れ、海の池に注ぐ仕組みです。

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長瀞峡の縮景。峡谷の奇岩を表しています。
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ユリカモメ

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名にしおばいざ言問はん都鳥わが思ふ人はありやなしやと
                             在原業平

都鳥、すなわち都民の鳥としてユリカモメが指定されました。
ちなみに都の花はソメイヨシノ、都の木はイチョウです。
幼児が「白いハトがいっぱいいるよ!」と60羽の乱舞に小躍り
していました。
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ヒドリガモ
美味しそうな若草を千切って食べています。草食のカモなので肉食の
カモのような臭みはないそうです。
やはり食用のカモに、ヒドリガモが入っていました。

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野鳥は1日中食べて、42~43℃の体温維持と飛ぶためのエネルギー
を確保しています。
飢死や病死や餌食により、巣立ち後の生存率は10%以下だそうです。

北帰行
来月の初めには北帰行が始まります。
帰る動機は日の長さや地球の磁気など複合的に捉え、飛行は気流や星
の位置、それに肉眼でも判断しているようです。
同じ種類でも親鳥は繁殖のため早く帰り、若鳥は体力をつけて10日
ほど遅れるそうです。
寂しいですが、3月の探鳥会で冬鳥は見納です。
10月~11月初めには、中国北部、カムチャッカ、シベリヤ方面
から再び清澄庭園に渡ってきます。

流枝(なげし)の松
松の美しい姿が、水面に映えるようにせり出しています。
自然界では天然の松の造形が見られ、松島の松を想い出しました。

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松の剪定作業
 
松のみどり摘み
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現在5人の庭師が、黒松約200本(赤松1本)を管理しています。
1本につき2日はかかるそうです。
お仕事中、来園者の質問に快く応じて下さいました。

作業前 (込み入っている) 作業後 (木漏れ日が入る)
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自由広場

満開のカンヒザクラ
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ソメイヨシノの開花 3/17
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鳥合わせ    
探鳥会の締めくくりに、観察した鳥の種類と数を参加者全員
で確認しました。

日本野鳥の会東京支部 平成25年3月16日 観察地:清澄庭園
                  天候:快晴 風:無 気温:19℃
全23種

カイツブリ    1    アオサギ   1  スズメ   2
カワウ      4    ユリカモメ  60 ムクドリ  5
カルガモ    20    ハクセキレイ 1  コゲラ   5
キジバト     3    ツバメ     1    
ハシビロガモ  50   ヒヨドリ    30
ツグミ      2    メジロ     10
ホシハジロ   50   シロハラ    1
キンクロハジロ 400  シジュウガラ  6
ハシボソカラス  2   ヒドリガモ   40
ハシブトカラス  5   オナガガモ  10   (ドバト 10)
   
ハクセキレイ   ハシブトカラス   オナガカモ   カルガモ
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ユリカモメ    アオサギ   
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「飛騨の円空一千光寺とその周辺の足跡」

2013.03.11.Mon
2013年3月11日

くすぐつたいぞ円空仏に子猫の手     加藤楸邨
陽炎や円空は何故彫りつづけ         〃

炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島       森 澄雄


円空(1632~95)といえば楸邨の二句が浮かびます。

澄雄の句は「炎天より」という幻想的な表現なので、
ひとりの僧は円空に思えてなりません。
円空は美濃国(岐阜県)羽島市に生まれました。

円空仏を初めて観たのは冬の三井寺(園城寺)でした。
円空は園城寺の天台密教の血脈(法統)を承け、そのお礼として
「善女龍王像」7体を寄進しました。
頭上に7体とも龍を載せて、琵琶湖を望む三井寺ならではの水神
という印象でした。   三井寺の山門で売る寒蜆   コウコ

このたびの東京国立博物館140周年の特別展である
「飛騨の円空一千光寺とその周辺の足跡」を心待ちにしていました。

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両面宿儺坐像
(りょうめんすくなざぞう 総高 86.9 千光寺)
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展示場の一室に千光寺(岐阜県高山市)所蔵の61体を
はじめ、同市14の寺社が所蔵する100体が展示されて
います。飛騨の森を再現するイメージでデザインしたそうです。
100体はもちろん飛騨高山の木が用いられています。

傑作として名高い「両面宿儺坐像」は正面奥にありました。
「日本書記」には民を苦しめたと書いてあり、飛騨では悪龍を
退治した伝説があるそうです。参詣者が同時に拝めるようにと
正面に顔を2つ並べ、荒々しい彫り跡が残る力強い像です。
飛騨の山の民の祖として、斧を持たせています。
円空は晩年の貞享2年(1850年)頃、千光寺に1年ほど滞在し、
両面宿儺座像をはじめ、多くの像と和歌を残しました。


円空像
(大森旭停筆文化2年 1805年 千光寺)
このたび円空との対面が叶いました。

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円空像は山々を背にしています。
白山は白山信仰のシンボルであり、大峯山は密教の金剛界であり、
その他の山岳も円空が投じた修験道の難行苦行を連想させます。
帽子の金剛界の五仏はすべての迷妄を打ち破る大日如来の叡智
の世界を表しています。

円空像は模写ですが、上の「一心」は円空の書と伝えられています。
一心は宗教用語かもしれませんが、一心不乱や一心岩を通すなど
心を一つに集中させた円空を象徴する書だと思いました。

円空は30代半ばから30年にわたり全国を修行で巡りながら、
その土地の木材を用いて仏像を彫り、民衆に与えました。
そして、なんと発願12万体を成就させたのでした。(現存5350体)

元禄8年(1695年)美濃国関の弥勒寺で63年の生涯を全うしました。


宇賀神象
(総高19.8 千光寺)
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豊穣、福徳の神。身体は白蛇で頭は老人。三角の頭と線刻の
お顔は可愛らしく、シンプルな造形はモダンです。
江戸時代前期の作品とは思えないセンスです。


不動明王および二童子立像
(総高95.8 62.3 58.8 千光寺)
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3体は1本の丸太を3つに割り不動明王は木の表皮を、2体は
木心を彫刻しています。ここには終始人が集まり、背面を確認して
いました。NHKの「日曜美術館」を見た人が多かったという印象でした。


弁財天立像
(総高100.8 飛騨国分寺)
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左の目尻に斑紋があり、お顔にシミ(肝班)があると思って、
近づいてますと木の節でした。
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このくらいのことは気にしないのかもしれません。
円空の神仏像は、太い節があれば位置をずらせば済むことで、
木が曲がっていればそれなりに彫り、自由自在です。

木そのものを仏と思い、木の中の仏を彫り出す仏師だったそうです。
木端でも枯木でも立木にも彫りました。

円空の手にかかれば如何なる素材も生かされます。
生かされないものは、もともと存在しないのかもしれません。
円空の心は、人のように微笑む円空仏を通して民衆に
伝わり、親しみやすく気軽に拝むことが出来たのでした。


柿本人磨坐像
(総高50.2 東山神明神社)
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円空は万葉歌人の人磨を敬い、歌詠みの神様にしたのでしょう。

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千光寺の山号「けさ」を和歌に詠み込んだ円空自筆の「袈裟山百首」
が展示されています。円空は他に1800首も詠んでいます。


賓頭蘆者坐像
(総高47.4 千光寺)
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撫で仏の頭をなでると病気が治るといい、古くからこの地方の人々
に親しまれたそうです。多くの村人が撫でたので頭が艶やかです。
若い人が撫で仏の意味を知り、興味深そうに話していました。


三十三観音立像
(総高61.0~82.0 千光寺)
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眉目は線刻で細く、口元は頬笑み、両手は胸の前で組み合わせ
ています。村人は病気に罹ると借りて祈りました。
そのまま戻って来ない場合もあったといいます。


歓喜天立像
(総高13.5 千光寺)
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頭が象、体は人間の2体が抱き合う形。
秘仏で7年に一度しか開帳されません。
公開により特別に厨子から出されました。


善女龍王像
(総高69.0 桂峯寺)
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円空の「善女龍王像」は三井寺で観ているので、
再会した気分でした。
止雨を祈って造り、円空は双六岳に登ることが出来たという
伝説があるそうです。

激しい鑿の跡がある一方、思わず微笑みに誘われてしまう
穏やかなお顔の円空仏。芸術家と宗教者の両面を感じます。
和歌を詠み、大般若教の見返しに184枚の絵も残しました。

これを機に円空を知りたいという思いに駆られました。



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上野公園はまだ冬木のままですが、
満開の緋寒桜と紅梅白梅を見付けました。