鹿野山の句碑

2016.09.04.Sun

  2016年9月4日

カメラを始めてようやく撮れたハンミョウです。人が近づくと前へ
飛び、近づくとまた飛ぶという素振りから、道おしえといいます。

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緑色の金属光沢があり、ビロードの凝った翅模様と脚が美しい昆虫です。
(斑猫・体長20mm)




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鹿野山を下りる途中、芭蕉句碑への矢印が目に入りました。
矢印に従い脇道を1kmほど入って行きます。




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芭蕉句碑は何処?と周囲を見渡して歩いていると、なんと道おしえが
先陣を切っているではありませんか。


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句碑を探すことより、暫くはハンミョウに夢中になっていました。




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カラフルな体色に加え、食肉獣に似た鋭い牙があります。


                *


ハンミョウを撮り終え、ふと振り返ると芭蕉句碑の立て札がありま
した。しかし肝心な句碑は竹林の周囲がネットで張られ、見ること
が出来ません。

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立て札の説明では鹿野山付近に芭蕉句碑が7基あり、芭蕉の系列を引く
地元の俳諧社中が芭蕉に習い、向上を願って建立したそうです。

   枯れ芝やまた陽炎の一二寸    芭蕉

「笈の小文」には「枯芝やや々かけろふの一二寸」とあります。
「加藤楸邨 芭蕉全句 ㊥」によると「芝はまだ枯れて冬の姿のままで
あるがその上にすでに陽炎がちらちらもえはじめて、ようやく春の気配
が動き出していることよ」とあり、当時この句のような自然の生かし方
は新鮮な句風であったそうです。

近年は君津でも狸が増え、農地を荒らす被害が出ています。ここでも狸
が竹の子を食い荒らすのでネットを張ったのかもしれません。

                *

竹林に入れなかった代わりに珍しい光景を目にすることが出来ました。

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日射しが傾きかけた時、多くの蜘蛛の巣が現れました。




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7色に輝く囲の中で獲物を待ちつづける蜘蛛です。


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               ***



鹿野山には芭蕉句碑の他、神野寺境内にも多くの俳人の句碑があります。

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この庭は中央の立て札の説明によろと「江戸城の庭を模して築庭されて
おり樹齢、数百年をこえる植林が歴史を感じさせます(江戸時代)」と
ありました。




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庭の正面中央には高浜虚子の歯塚があり、句が刻まれていました。

   明易や花鳥諷詠南無阿弥陀   虚子


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「明易」は短い夏の夜です。
「花鳥諷詠」は人間の営みを含めた森羅万象を詠むことだそうです。
人生もまた明け易く、花鳥諷詠南無阿弥陀のフレーズには祈りを感じ
ました。立て札には神野寺で詠まれたとあり、名句の現場に立つこと
ができて感動も一入でした。




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最後までご覧下さり有り難うございました。

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バオバブの木

2014.01.18.Sat
2014年1月18日

上野動物園のモノレールは東園駅から西園駅まで約1分半です。
西園を訪れたのは初めてで、不忍池のエリアには落葉した奇妙な擬木
が忽然と現れました。それは「星の王子さま」に登場し、映像でも見
たことのある「バオバブ」だと一目で分かりました。
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西園では「不思議の島マダガスカル」を紹介していました。
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乾燥地帯に自生するバオバブは世界に10種類で、マダガスカルに8種
オーストラリアとアフリカに1種ずつあります。

マダガスカルの霊長類は全てキツネザルの仲間であり、その約70種の
全てがここに生息しています。最も有名なベローシファカは、むかし日
本のテレビコマーシャルに登場し、2足の横っ飛びの見事さには感心し
たものです。

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バオバブの空洞に入っていくのは、トレードマークの縞模様の尾をもつ
ワオキツネザルです。かれらは日中、地上を群れで活動しています。
 このような光景はマダガスカルでは自然に観られることなのでしょう。

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             ***

バオバブを初めて知ったのは10代で、サン=テグジュペリの
「星の王子さま」でした。丁度その頃、朗読会で岸田今日子、
小池朝雄、日下武史、その他の諸氏による「星の王子さま」を
鑑賞しました。半世紀前のことが昨日のように鮮明に蘇ります。
いま思うと夢のような共演でした。
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バオバブは恐ろしい種で、星の上にはびこり、その根で星を突き通
し破裂させてしまいます。なまけものが住んでいた星ではまだ小さ
いからといって、ボオバブの木を3本放りっぱなしにしておいたら、
とんだ災難になりました。
王子さまから教えてもらって作者が描いたのが、この絵でした。
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バオバブは「星の王子さま」では悪ですが、人類には多大な恩恵を
もたらしてきました。果実や葉は食用に、樹皮は縄や壁に利用しま
した。マダガスカルでは樹齢500年以上、アフリカでは1,000
年を超し、中には6,000年の樹もあるようです。
ボオバブは神聖な木とされ、祈りが捧げられたそうです。
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(マダガスカルのバオバブ)

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そのようなバオバブがなぜ悪なのか疑問ですが、
アフリカには古くからバオバブに関する寓話がありました。
バオバブは地球で最初の木でしたが、ヤシの木の高さやイチジクの
果実を妬んだために神が怒り、引っこ抜いて地面に坂さまに刺した
ことから、アップサイドダウンツリー(上下さかさまに木)と呼ば
れるようになったそうです。
土地の人々はバオバブに対する畏敬の念と感謝の気持ちを抱きなが
がらもユニークな姿に親しみを覚え、ユーモアさえ感じたのではな
いでしょうか。先行する寓話を想うと「星の王子さま」のバオバブ
は作者の途轍もない創造力であり、今もって驚嘆させられます。

             ***

バオバブの自生地はいま危機的な状況にあります。大規模開発、
人口増加などによるもので、国際的な保護活動が行われています。

「星の王子さま」は1943年に出版されて71年が経ちました。
この星のバオバブが絶滅に瀕するとは思いも寄らないことでした。



カエルは帰る

2012.10.18.Thu
2012年10月18日

海月ゆく思いのままに無一物     コウコ
(くらげ)

 うちのヒキガエルとまだ絆が出来ていない頃、
 半年以上も姿を見せないことがありました。
 その頃、カエルが轢かれていたのを見たと
 何人かが知らせてくれました。
 悲嘆にくれていたある日、
 巣穴を覗くとヒキガエルが帰っているではありませんか!
 嬉しくてご近所にふれ回ったほどです。

 そんなヒキガエルを観ていて、ふと芭蕉さんのことを想いました。
 蛙といえば有名な一句<ふる池や蛙飛びこむ水の音>があります。
 「江東区芭蕉記念館」には芭蕉遺愛の石が展示され、
 「芭蕉稲荷神社」には蛙の置物がいくつもあります。
芭蕉遺愛の石
  
芭蕉像
     江東区芭蕉記念館発行 ポストカード
     芭蕉遺愛の蛙(伝)、天保6年(1835)加藤宗清作芭蕉像


 その当時、蛙の句は<鳴き声>を詠むのが一般的で、
 蛙が飛びこむ<水の音>を詠んだ独創性は世間を驚かせました。
 芭蕉さんがモットーとする「不易流行」の
 先駆けの一句だったのです。
 
 生涯は<芭蕉庵>と<旅>との繰り返しでした。
 「おくのほそ道」では<古人も多く旅に死せるあり>と語り、
 尊敬する西行も李白も杜甫も旅先で亡くなりました。
 おなじ詩人の芭蕉さんにとって客死は美学でした。
 しかし当時の旅は、とても困難で命がけでしたから、
 門人たちは無事に帰ることを、どんなに祈ったことでしょう。
 
 蛙の習性を観ていると、周期的に数日から数週間
 巣穴を留守にしますが、必ず帰ってくるので
 縁起のいい生き物なのでしょう。
 <蛙は帰る>まさに実感です!

たった一匹のヒキガエル

2012.10.14.Sun
2012年10月14日     

蟇の穴のぞけば会える時間帯     コウコ
(ひき)

 「ちいさな王子」(サン・テグジュペリ作 野崎歓訳)の
 第21章にキツネが登場します。キツネは王子に
 <なつかせる>とは<きずなを作る>ことだと教えられます。
 
 かつて王子の星に、美しく魅力的なバラが咲きました。
 しかしそのバラはいろいろと難しく身勝手なので、
 王子は自分の星から抜け出し、さまざまの星を旅して、
 ついに地球にやって来たのでした。

 王子はキツネに「もう一度、バラを見に行ってごらんよ。
 そうすれば、君のバラがこの世でたった一輪のバラだってことが
 わかるから」とすすめられ、5千本のバラを見に行きました。
 バラたちを前にして、王子は自分の星に咲く一輪のバラに水をあげ、
 ガラスのケースをかぶせ、ついたてをたて、毛虫を退治し、
 ぐちも自慢話も聞いてあげたのは自分のバラだったからだと
 気付きます。
 キツネは「時間をかけて世話したからこそ、君のバラになったんだ」
 と言いました。
 
 8年前に出会ったヒキガエルも、いつしか「うちのヒキガエル」と
 呼ぶようになっていました。
 ある年、冬眠から覚めたヒキガエルの背骨が尖るほど痩せて
 いたので、ついミミズを与えてしまったのです。
 提供した巣穴もお気に入りで、近づいただけで出て来ますし、
 じっと端坐して餌を待つ健気さはとても可愛いものです。

  10月14日たった1匹のヒキ
 
 十代で出会った「星の王子さま」(内藤濯 訳)ですが、
 「ちいさな王子」(野崎歓 訳)の<なつかせる>の訳文が心地よく、
 新鮮な再会でした。